俺がキレル直接の原因となったのは
人事課長の発言だった。
その後も、人事課長とは何度か廊下ですれ違ったりしたが
俺には目も合わせず、
怒っているのか反省しているのか判らない態度だった。
盆休み明けの週末、会社のゴルフコンペがあり、
ホールアウト後に風呂に入っていると、
件の人事課長も浴室に入ってきて、
卑屈な目で俺に近付いてきた。
俺と一緒に湯に浸かっていた同僚T君は、
課長の意図を察して逃げるように去っていった。
課長はそれまでとは違って、
平身低頭、お詫びの言葉を発し始めた。
但、取って付けたような言い訳も忘れずに言う。
「ヒラの日本人でも、タイでは課長待遇なのですよ。
例のクジ引きは課長職以上は権利がないんです。
岡村さんの場合もそれにあたると思っていたので・・・」
(余計な事を言わなきゃいいのに)
と俺は思った。
一言謝ってくれればそれで気は済むのだ。
余計な理由を言うから、わだかまりは解けないのだ。
理由を言うということは、
自分の正当性を主張する事に他ならない。
心から反省しているのではない、と感じれば、
全てを水には流すこともできない。
彼の発言を許してはいるが、
反省していないようだから、たぶん俺は忘れないだろう。
しかし、いつまでも密着されていてはウザイので
「もう、いいですから。分かりましたから」
と俺は言って、早々に浴室を出た。
翌週の8月27日、人事部長がやってきて
6月と7月の研修手当として12万円を支給してくれた。
又この時、
タイ~日本本社までの旅費も払ってくれた記憶があるが
当時の日記にはその記載がない。
ハシタ金なのでどうでもいい事だが、
会社の名誉のためにも”確かに支給してくれた”
と書いておこう。
一応、常務の言う通り、
「ちゃんと」やり始めたのか、と思ったが、
あまり期待しないつもりでいた。
