2008年11月27日木曜日

コスト削減で残業を減らすほど運営が苦しくなる

日本本社の設定した仕切りが厳しいとは言え、
当時のタイ現地法人は毎月・毎年、赤字を垂れ流していた。

よって、経費削減が至上命題となり、
ワーカーの残業代もその対象となった。

が、タイ人ワーカーは残業(OT)したくてたまらない。
OTが少ないと、生活が苦しくなって辞めてしまう。

会社には痛し痒しである。


ワーカーは、8:15~17:15までが定時。

そしてOTは、17:50~20:00が1発目。
さらにOTする場合は20:10~23:00。

俺がタイに戻った当初、
23:00までのOTが当たり前だった。

そして、多くのワーカーたちは
23時までの残業をこなした翌日も、
7:30頃には出勤してきている。

ざっと計算しても、
ほとんど寝ていないんじゃないか、と思う。

会社の通勤用バス(*)があるが、
アレに乗るために朝5:30に起きているワーカーが多かった。

*バンコクの中心地でもたまに見かけるが、
派手な塗装の大型バスで、
運転手が音楽を大音量で鳴らしているアレだ。


で、23:00すぎのバスに乗って帰途につき、
1時間かけて家に着くと、0:00。
水浴びしてすぐに寝ても、0:30だ。

ゆっくり家で寝る時間が5時間、
通勤のバス内で寝る時間が往復1時間。

ま、これなら寝不足ということはないかな~?
会社から10分くらいの安アパート街もあり、
そこの住人ならもっと楽だけどね。

(作業しながら寝ているワーカーもよく見かけたな~
 作業中、立った状態のまま寝るからスゴイんだよ)


でも、俺の部下には、
片道1時間以上かけて通勤するワーカーが多かったので、
なんとかいい暮らしができるようにしてやりたかった。

残業すればするほど身体はきついだろうけど、
それでも彼らは残業代が欲しいのだ。


だから、赤字対策でOTを減らすことについては、
俺は否定的だった。

OTを減らすために、従業員を増やすのだから、
福利厚生費が増え、赤字対策としての効果もないからだ。


人件費を減らすにも、その方法がポイントなのだ。

人を増やすと単純に経費が増えるし、
ギリギリの人数で回そうとすると、罠にはまる。

例えば、突然休んだりすることは多いし、
男なら数ヶ月間、出家する事もある。

そうでなくても、辞められたら終わりで、
新人を雇ってまた一から教えなければならない。


なかなか難しい問題で、
アチラを立てればコチラが立たず、
だが、総合的見地で真剣に考える人がいないのが
会社にとっての悲劇だったと言える。

権力ある人は怒鳴るだけだし、
権力ない人がいくら提案しても、上司は馬耳東風。
我々下っ端のほとんどはタイ語が話せないし、
通訳もいないので、抜本的改善など夢の話。
”カイゼン”どころか問題に追われる毎日だった。


ちなみに、タイに来たばかりの日本人が驚く事に、
定時のチャイムが鳴ると、タイ人ワーカーたちは
やりかけの仕事があっても即、手を止めて、
サッサと帰ってしまう、というのがある。

無知な日本人には理解しにくいようだが、
上記の通勤バスに遅れると家に帰れないから、
というのが理由の一つだ。

乗り遅れたワーカーは置いて行かれてしまうのだ。

こういう点を理解してあげないと、
うまくタイ人を使うことはできないと思う。

また、なんでサービス残業しなきゃダメなの?
という意識もあるはずだ。


副業を持っているタイ人も多い。
彼らには、会社で働く事が生活の中心ではないのだ。